アフリカの貿易事情は?輸出や関税などの基礎知識

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    「最後のフロンティア」アフリカ

     「最後のフロンティア」という言葉をご存じでしょうか?これは広大な国土と多くの生産年齢人口、そして豊富な天然資源により今後急速な成長が見込まれるであろうアフリカ大陸を指す別名として広く知られる言葉です。

     現在ではその可能性を見込んで、中国やロシア、アメリカが投資先として目を光らせているわけですが、昨今では日本からも多くの企業が参入し始めています。今回はそんなアフリカに関する実際の貿易事情についてまとめてみました!アフリカへの進出をお考えの際は是非チェックしてみてください。

    対アフリカ貿易の現状

     日本の財務省貿易統計によると、日本の2021年の対アフリカ貿易は、総輸出額が95億6,475万ドルと、前年比20.9%増となりました。

     具体的には、一位は船舶(構成比24.9%、前年比13.2%増)、2位は乗用車(15.7%、31.5%増)、貨物自動車(10.6%、35.4%増)でした。またバス(4.4%、23.5%増)や自動車部品(4.2%、47.1%増)も大幅に伸び、多くを乗り物が占めていることがわかります。このほか、熱延鋼板(6.0%、41.4%増)、建設機械(3.4%、91.4%増)も前年を大きく上回ったのもポイントです。

     またグローバル・ナレッジ・パートナーシップ(KNOMAD)の公開データによると2021年のアフリカへの送金額は、前年比12.9%増の949億8,000万ドルで、過去最高となりました。アフリカの金融テクノロジーと代替金融の見通しは、非常に良好です。2022年のUNCTADの調査によると、アフリカの金融テクノロジー企業による投資額は2021年に20億ドル超と急増しました。これは2020年比では200%増という結果になります。

    その他アフリカで売れている商品

     上記以外にも、以下のようなカテゴリーの製品の売れ行きが好調です。

    スマートフォン

     ケニアでは2019年時点で人口の約44%がスマートフォンを所有しており、2023年までに更に400万人増えるとされています。注目すべきは消費者の電話機器への支出額は2033年には現在の約2倍以上に増加するとケニア総務省が見込んでいることです。

     これまでは価格重視だったスマートフォン市場が、今後品質や性能が重視される市場に変化していくとの見方もあります。中国産の安価な商品より日本の高品質な商品を好む人々も現れてくるのではないでしょうか。

    ベビー用品

     アフリカの20歳未満の若年人口比率は約5割と高く、2050年には世界人口の4分の1を占 めると予想されています。

     ナイジェリアでは、女性の社会進出による購買力向上に加え、モバイルマネーやeコマースの普及を背景に農村女性の取り込みが可能になったことで市場の拡大が進んでいます。出生率も世界平均を大きく上回り、ベビー・子ども用品市場の広がりにも期待がかかります。ナイジェリアの出生数は2016年時点で716万人とアフリカ最多を誇り、低所得国ながらも乳児数が多いため有望です。日本製品のメインターゲットと想定される中間層以上の消費者は23%いるとされています。

     ナイジェリア以外でもアフリカでは子供を宝物のように寵愛する家庭が多く、大人は我慢しても子供への支出を惜しみません。そのため、より良い品質、好きなブランドの製品を使用し続ける傾向があり、ニーズに合致する商品展開、ブランド戦略が展開出来れば大いにチャンスがありそうです。

    アフリカの関税事情

     アフリカ域内の輸出総額に対する割合はヨーロッパやアジアの域内貿易の約4分の1、北アメリカの約半分と、非常に少ないです。これほどまでに少ない理由には、アフリカ域内の高い関税率、そして税関の問題があります。農業肥料を除けば多くのアフリカの国々で20%以上の高い関税がかけられているのです。

     しかし、JICAが2014年から行っているワンストップボーダーポストにより、内陸国への国境を超えた輸送も一元化されています。例えばタンザニア、ルワンダ間の国境は、通関所要時間が3分の1に減少しました。

     また輸出入・港湾関連手続きのワンストップサービスを意味する「シングルウィンドウ化」もアフリカ各国において進んでいます。例えば日本からの輸入額が305億円のナイジェリアでは、Nigeria Single Window Trade Portalが現在稼働中です。これはあらゆる機関へのアクセスを国内外の貿易関係者に提供する、省庁横断的なWebサイトで、関税率などの情報提供をしています。

     このように、アフリカの関税率は高いものの、システムの一本化などの取り組みにより一部の国で改善が見られています。

    品目による注意事項

     アフリカ諸国との貿易の際には、許認可や検査が別途必要になる場合があるので注意が必要です。東日本大震災時の原子力発電所の事故後数年は日本食の輸入を一部規制する国もありましたが、近年はその規制が撤廃されています。モーリシャスでは2016年に、コンゴ民主共和国では2019年に、エジプトとモロッコでは2022年に撤廃されました。

     またライセンスが必要な品目もあり、例えばケニアではワシントン条約対象製品はケニア野生生物庁(KWS)から発給されたライセンスを得なければ現地へ輸出できません。

     各国の輸入既製品はそれぞれ異なる為、日本からの輸出をする際は十分に注意して確認するようにしましょう。

    アフリカを正しく理解して進出の準備を

     今回は「最後のフロンティア」であるアフリカに関して、輸出や関税などの基礎知識をまとめました。これからの高い需要が見込めるアフリカ貿易で成功するために、ご紹介したデータのみではなく、最新の情報にも目を光らせましょう。

    伊藤忠商事出身の貿易のエキスパートが設立したデジタル商社STANDAGEの編集部です。貿易を始める・持続させる上で役立つ知識をお伝えします。

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