モロッコ貿易・輸出の基礎知識(概況や基礎統計)

目次

    アフリカ北西の国モロッコ

    モロッコは、アフリカの北西端に位置し、地中海の入口、ジブラルタル海峡を挟んで対岸にはスペインが位置し、ヨーロッパに近い気候をもちます。北部には地中海に面するリゾート地や「青い街」のシャウエン、南部にはサハラ砂漠があり、またヨーロッパとアフリカとアラブの文化が混ざり合う魅力あふれる観光地として一定の人気を博しますが、今回は基礎データとともに貿易的な側面からモロッコについてお伝えします。

    モロッコの基礎情報

    基礎データは以下の通りです。

    ・正式名称:モロッコ王国 Kingdom of Morocco

    ・人口:3,666万人(2022年6月、モロッコ統計局)

    ・面積:446,550㎢ *世界57位。日本の1.2倍

    ・首都:ラバト

    ・言語:アラビア語(公用語)、ベルベル語(公用語)、フランス語

    ・民族:アラブ人65%、ベルベル人30%、その他5%

    ・宗教:イスラム教(スンニ派)

    ・主要産業:農業(麦類,ジャガイモ,トマト,オリーブ,柑橘類,メロン),水産業(タコ,イカ,鰯),鉱業(燐鉱石),工業(繊維,皮革製品,食品加工,自動車,自動車部品,電子部品,航空部品),観光業

    ・名目GDP総額:2021年 1兆3150億ドル 世界59位、アフリカ5位

    ・1人当たり名目GDP:2021年 3,620ドル 世界122位

    日本との貿易状況

    対モロッコ貿易では輸入の方が比較的盛んで、タコやイカなど多くの魚介類を輸入しています。

    日本の輸出額:2.27億ドル

    日本の主要輸出品目:輸送用機器(39.0%、自動車など)、電気機器(20.8%)、一般機械(20.0%)

    日本の輸入額:3.57億ドル

    日本の主要輸入品目:魚介類(55.9%)、衣類・同付属品(16.0%)

    また現地で活動する日本人は比較的少なく、進出日系企業拠点数は70(2020年10月1日現在)、在留邦人は355人(2021年10月1日現在)となっています。

    モロッコへの商品の輸出手続き

    ☆輸入品目規制

    まず輸出したい商品が規制の対象か、手続きを踏めば輸出できるのかを確認しましょう。

    ジェトロの貿易管理制度でこれらを確認することができます
    貿易管理制度 | モロッコ – アフリカ – 国・地域別に見る – ジェトロ

     

    ☆輸出入許可申請

    輸出入許可申請には、事前に商業登記番号が必要です。

    特定の品目については、ライセンスや事前申告が必要です。

    2015年5月から輸出入手続きが電子化されました。一般の輸入申請、輸入ライセンス申請、輸出ライセンス申請は、オンライン申請窓口「PortNet」を利用しましょう。

     

    輸入禁止品目、および輸入ライセンス・事前輸入申告が必要な品目以外の輸入については自由です。

    1.申請前の手続き

    モロッコへの輸入に際しては、商業登記番号が必要です。

    商業登記番号は、輸入業者の主要な事業所、あるいは本社所在地の第一審裁判所から付与されます。

     

    2.一般の輸入申請

    輸入業者は、オンライン申請窓口「PortNet」を利用して利用者登録を行い、輸入契約(engagement d’importation)を作成します。

    また、インボイス(単価、輸入量、輸入される品目の商品名、納入条件、原産国、支払条件を記入)を添付し、取引銀行に開設した口座を手形支払い先としてオンラインで指定します。手形支払い先の指定ができると、輸入契約は、為替局、貿易担当省、管轄の税関、輸入業者に、オンラインで自動的に通知されます。輸入契約の有効期間は、手形支払い先指定完了後から6カ月です。なお、代金支払いを伴わない輸入には、輸入契約は不要です。

    商業登記していない事業者、自然人・法人(農協、大学、大使館、観光客など)による輸出の際には、税関で、商業登記番号に代わる番号が与えられます。これらは、すべてオンラインで可能です。

     

    3.輸入ライセンスが必要な品目の輸入申請

    輸入業者は、オンライン申請窓口「PortNet」を利用して利用者登録を行い、オンラインで取引先銀行の手形支払先を仮指定(Pré-domiciliation)します。輸入ライセンス(Licence d’importation)申請を作成し、インボイス(前記2.一般の輸入申請を参照)を添付して、オンラインで貿易担当省に提出します。同省からライセンス付与の可否が通知されます。ライセンスが下りると、輸入業者の取引銀行において手形支払い先が指定(domiciliation)され、輸入ライセンスが為替局、貿易省、管轄の税関にオンラインで自動的に通知されます。輸入ライセンスの有効期間は、貿易担当省の査証発行日から6カ月で、これらは、すべてオンラインで可能です。

     

    4.事前輸入申告が必要な品目の輸入申請

    モロッコの国内産業に大きな損害を与える可能性がある品目の輸入には、事前輸入申告が必要となる場合があります。大量輸入、輸出国で補助金を受けている品目の輸入、ダンピングに相当する価格で輸入される品目などに対して、追加関税や輸入量制限(contingent)を導入するか否かを審査する間(通常9カ月~18カ月の間)に、当該品目に対して申告が義務化されています。申告は、輸入量制限や輸入許可を課すことではなく、実際の輸入者、輸入量、輸入元、輸入価格などの詳細なデータを取ることを目的としています、

    一方で、オンライン申請窓口「PortNet」が導入され、自動的に当該品目の輸入に関するデータが収集・分析できるようになってから、事前輸入申告は実質的に不要となり、制度としては形骸化しています。

     

    5.免税の対象となる品目の輸入申請

    自由貿易協定/関税・貿易協定の枠内で、輸入は自由である(ライセンスの対象とならない)が輸入量割当の対象となる品目に関しては、免税措置について申請が必要となります。関税免除申請書(Demande de Franchise Douanière:DFD)の申請は2020年4月以降、「PortNet」で可能です。DFDをオンラインで作成し、インボイスをPortNet上でアップロードします。貿易担当省による免税査証付与の進捗および可否もオンラインで確認できます。

     

    オンラインでの申請ができない場合は、関税免除申請書(DFD)をPDFで作成し、インボイス(前記2.一般の輸入申請を参照)とともに貿易担当省にメールで提出します。免税許可の有効期間は、査証発行から最長で6カ月間です。

     

    6.輸入品の審査・検査

    a.工業製品の規格順守証明(必要に応じて)および検査

    規格適用が義務付けられる工業製品の輸入には、産業担当省交付の規格順守証明(Attestation de conformité aux normes)の提出が必要な場合があります。

     

    b.動物・動物性/植物性食品・水産品等の原産国の衛生証明

    生きた動物、動物性/植物性食品、動物/植物由来の製品(殺虫剤・農薬・化粧品・肥料含む)、食品添加物、水産品、飼料の輸入に際しては、原産国(あるいは通過国)による公式な衛生証明書が必要です。

     

    c.植物検疫

    食品安全衛生局(ONSSA)による証明書の発行をもって、輸入が許可されます。また、保健衛生上の検査や輸入量の検査ができる港湾・空港でのみ、通関が可能です。

     

    7.貨物申告書(Déclaration unique des marchandises:DUM)の作成・提出

    輸入品が到着すると、運送業者により、通関用システム「BADR」を通じて税関への簡易申告(déclaration sommaire)が行われます。詳細申告では、インボイス、輸入契約関係書類、品目によって必要とされるその他の書類を、オンラインで提出します。



    ☆必要書類

    モロッコに輸入する際には以下のものが求められます。

    ・輸入契約または輸入ライセンスの申請(オンライン申請)

    ・インボイス

    ・貨物申告書(DUM、オンライン申請)

    ・輸送証券・運送状

    ・原産地証明(免税対象品目の場合)

    ・包装明細書(パッキングリスト)

    ・各種検査・認可証明書など

    モロッコ貿易・輸出の基本まとめ

    モロッコとの貿易では、日本からの自動車輸出が盛んです。今後も自動車や機械の需要は高まると予測されます。当サイトではその他の国についてもご紹介していますので是非ご覧下さい。

    伊藤忠商事出身の貿易のエキスパートが設立したデジタル商社STANDAGEの編集部です。貿易を始める・持続させる上で役立つ知識をお伝えします。

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